MAKING THE ROAD人事部の皆様向けコラム

【Vol.17】キャリアマネジメント施策は戻らない

適正化

ご覧頂きありがとうございます。

先週は『従業員の副業に人事はどう向き合うのか』を実施しました。

人事はどのような方向性で人事施策を考えるのかについて
非常に興味深い内容でした。

今回のセミナーでお話しを伺った中で、
『副業を開始している従業員は組織への愛着が高い』
という研究成果を伺い、企業のキャリアマネジメント施策の潮流を
改めて考えさせられるものでした。

企業のキャリアマネジメント施策の変遷を概観することで
働きに対する意識変化を捉えるヒントがあるのではと思い今週のコラムとしたいと思います。

企業のキャリアマネジメント施策は、オープンに開放する方向性を取るべきです。
それをしない企業は社員にとって不誠実なキャリア開発を行っていると私は考えています。

オープンで開放的なキャリアマネジメント施策を行わない企業は
優秀人材の離職に繋がり、やがて採用競争力を失っていくでしょう。

『副業を開始している従業員は組織への愛着が高い』ということは、
社員の立場から見ると、会社が自身のキャリア開発を誠実に考えていると
捉えていることが理由であると考えます。

少し古い話ですが、日本型経営の3大セットと言われた
「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」
は高度経済成長を遂げている中では非常に有効に機能してきました。

経済が右肩上がりで成長しており、それに伴い会社も成長していく環境の中で
(個別に見ると業績の悪い会社も当然ながら存在します)
会社では頑張る人、我慢できる人が良いとされていました。

しかしバブル崩壊などといった環境変化により2000年代に入ってからは
「滅私奉公から活私貢献へ」「自分を経営する時代へ」
というキャリアについてのメッセージが発信されるようになり、
企業は従業員との関係を会社への依存型から
会社からの自律(自立)型への移行を目指しました。

経済環境の影響により新卒採用数も絞り込まれ、
就職氷河期世代やロストジェネレーションと呼ばれる人々が発生したり、
成果主義と言われる人事制度が導入されたのもこの頃です。

2019年に経団連の中西会長が「終身雇用は制度疲労」、
トヨタの豊田社長が「終身雇用は難しい」という発言しニュースにもなりましたが、
約20年経ってもこの発言が取り上げられるというギャップは大変興味深いですね。

いずれにしても2000年前後から企業は従業員に終身雇用や年功序列を約束できなくなったのです。

このあたりからキャリアに対する考え方として
「エンプロイアビリティ(雇用され続ける・雇用されうる能力)が大切だ」
というワードが出てきます。

企業に対しては、急速な変化にもフレキシブルに対応できるよう、
エンプロイアビリティの高い人材が自らの意志で集まる魅力的な企業
であることが求められました。

従業員に対しては役職、年齢、雇用形態関係なく、
所属している企業から必要な人材として認知されるだけでなく、
社外からも必要とされる人材となるよう、自己責任において自分のキャリアを形成し、
エンプロイアビリティを高め自律することが求められ始めました。

これらを持って「企業と個人は対等である」とした訳です。

また企業は労務構成を是正する必要性もありました。

人員構成の大きなウェイトを占めていた団塊世代が50歳を超えており、
年功序列いよる雇用慣行により人件費の負担感が増大したのです。

このことから一定の年齢に到達すると役職が外れる役職定年や
会社が定めた条件(年齢や勤続年数)を満たす社員が自由に応募できる
恒常的な制度としての早期退職優遇制度の導入が進んでいきます。

これらの考え方や諸制度はリーマンショックや2010年代中盤の大手製造業を中心とした
雇用調整にも踏襲され、拡大して運用されていきました。

企業も個人も厳しい経済環境による変化対応を経て徐々に
「企業と個人は対等な関係」に進んでいきました。
ここに至るまで15年~20年必要だったのです。

雇用を守ることは重要ですが、雇用を守ることを約束する会社は多くないでしょう。
また働く個人としても、生涯に渡って所属している会社が存続すると考えている人も多くないでしょう。

これまで企業のキャリアマネジメント施策として目指してきた個人が
自分自身のキャリアに責任を当たり前のように持つようになったのです。

今回のテーマの副業も個人のキャリアを考える上ではリスク分散に繋がります。

企業と個人は対応な関係である以上、企業のキャリアマネジメント施策も
過度に自社への忠誠や束縛をすることなくオープンで開放的な方向性の施策を取る方が
社員のキャリア開発に誠実に向き合っていると言えるのはこの為です。

そのような会社や施策に社員が愛着を感じるというのは、
これまでのキャリアマネジメント施策の歴史を振り返ると
当然の結果ということができるでしょう。

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